【アラン島石ろまん】
1999年10月、かるごはとうとう念願のアラン島に足を踏み入れた……!! 一泊二日の短い滞在だけど。 同行者のリナさんは、96年9月の初アイルランド・ツアーで知り合った人。 *出会いの概要については余談をどうぞ(さらに詳細を知りたい方は、かるごめーるで)。
|
◆リナっちは通路をはさんで斜め後ろの席にいた。まさか同じツアーとは思わなかったが。 若そうなおばさんのような、年齢不詳、日本語しゃべっているけど発音の違う英語もしゃべってる。国籍不明。性別だけはわかる、「女性」。そんな感じ。 で、台風が去ってやっと飛び立って、乗り換え地のロンドンに着いたのが真夜中。 そのときに「ビューリーズのツアーなら、この先一緒に行動していいかしら」と声をかけられて。 友達とふたり、かるごはうなずき、なんと初日からまるで一緒に参加した3人組のように元気に動きまわっていた。 そう。元気なわれわれであった。 |
彼女は――寒いところは苦手らしい。出発前の準備のときも、かるごがウキウキ 「アラン島へ行こうね」 と言っても、乗ってこない。一度だけ、「寒いんでしょ」とぽつりと言ったことがあったが、それきり。 「アラン島……」とリピートするだけで、遠い目をする。 なんにもない、風と石だけのところ、と言ってからはなおのこと。 でも強行!!! だって、一日だけでも一泊だけでも、行きたいもの!!!! リナっちはこわばった顔のまま、ついてくることになったのだが――果たして、 アラン島。どうだろか? ゴールウェイで、バス&フェリーを予約。B&Bも予約できる。 出発は昼12時、翌朝一番のフェリーでールウェイに戻るので、宿は港に近いほうを希望した。 朝はコンチネンタル。安く。安く。 「かるごが行きたいのだから、かるごにまかせる」 よし。リナっちはあきらめ気味。本土よりずっと寒いだろうことについては、気づかぬふりをしておく。 そういや前夜シャノン空港到着時から、「風が冷たい……」とささやいていたが、それも明らかに無視しまくっていた かるごであった。 さてさて。話を元へ。 さほどでもない揺れだったフェリーを降りる段になると、「ここはアラン島、イニシュモア!」とひとり ドラマチックに心をはずませる。巡回バスに乗って、まずはB&Bに。 ほんとにふつうのおうち。8割方縮小サイズって感じがするくらいの、こぢんまり。 紅茶で一息入れたあと、はりきりかるごはさっそく―― 「さ! 行きましょう!!」 貸し自転車で回るのが夢! ミニバスツアーで名所をまわってからサイクリング、が賢かったのかも しれないのだけど、かるごは自分で島の景色を、風そのものを感じたかったのだ。 「……はりきってんなあ」 リナっちはあきらめ気味に宿をあとにする。でも、自転車は乗りなれているから自信がある、とも 言ってくれたので、楽しもうね♪と終始ごきげんなかるごなんであった。 だって、宿を出てからレンタサイクル屋に行くまでの海岸沿いの道、感動的な広がり。 広がりといっても、「海は広いな大きいな」ではないのだ。無限を感じるのではない。 この海は、世界のどこにも続いているだろうけれども、でもほんとに、そういうどこにも続いている はずの同じ海なのだろうか?と思わせる広がり。どこまでも波の続く先は、よその国ではなく 異界かもしれない――と信じさせられそうな異質な広がりを感じるのだ。 この海は、アラン島を攻めも守りもするのだろう、という不思議で身近ななにか――。 ちょっと浸りすぎ??? でも、潮の引いた岩場に海藻が残されているのを見ると、やはり島で作られる自然、生活に 思い及ばせずにはいられなかった。 さて、自転車を借りる。 妹にもらった『近来稀に見るアバウトな地図』を片手に、半日のサイクリングスタート! せめてもの名所ポイント(廃墟ポイント)案内なのだが、距離感がつかめない。 おまけに、適当に走っている間、それだけで楽しくなってしまって、行けども行けども廃墟にたどり 着かなくとも、胸がいっぱいになるくらい、ひとり感動していた。 たとえば、通りすがりに幾度となく目にする石垣。 これがうねうねと島の中心に、あるいは丘のてっぺんに向かって続き、緑の深い草を仕切って いる――人気のない通り、どれもB&Bで感じたようなこぢんまりとした家々……。 また、海へ漁に出たまま帰ることのなかった男たちの墓石。 その無骨さ、でも、どこかあたたかいそのたたずまいに、形に、なにか感じないなんてことが あるだろうか? おそらくSt.Arkin's Castleの跡になんとかたどり着いたときには、この島の道なりや ただのヘッジに魅せられつつあった。 うれしくって写真を撮る。 見たとおりに撮れてなくても、そのときの心を思い出すために、記録として撮るんである。 それを見たとき、興奮や喜びは思い出せる。見たとおりでなくても、実際に見た景色が もう一度きれいによみがえってくるから――ああ、なんてろまんちすとなんだろう、かるごは!――そうそう。リナっちは、はっきり言って廃墟には興味はない。 というか、かなりのリアリストなので、かるごひとり余韻に浸っているその横で 「さび、さび」と言ってくしゃみをするくらいである。 こういう人も相棒としては、たしかに必要である。 黙ってついてきてくれるけど、現実的に判断してくれてありがたい場面もあるのだ。 そう――おそらく、風邪をひかずにすんだのは、リナっちのおかげであろう。 しかし、その他の遺跡はあのへんらしい、一応目指すことにして……と動き出して ほどなく、自転車を漕ぎつづけるには困難な場所に行き当たる。 「お、お尻が……」 ガコンガコンしばらく乗ってがんばった。 それから、しばらく押して歩いてみたりもした。 が、やはり「飽きた」らしい。 「着かない……」 そう――彼女は遺跡などには興味がないので、サイクリングの楽しみも奪われた上で そこへ行くなんてこと、考えられないだろう。 さすがのかるごも申し訳ない気持ちになったので、ちゃんと走れるところに戻ろうと いうことにした。 「島の道なりを気持ちよく走ろう! で、その先に近くに遺跡やなんかがあったら 行くってことで、気ままにいこう!」 と、まあ、そんな感じで。 ![]()
うねうねうね…………緑の中をゆく道 なんとなくミニサイズのおうち
リナさんは、ガコン、ガコンとすんごい振動をものともせず…… わたしたちはそうして元来た道を引き返しつつ、島の中央を目指して走り始めた。 気持ちよく、ふつうにサイクリング♪ これはこれで、ほんとうに楽しかった! 広い広い空の下で、まるで大きな天井のような空の下で、リナっちとかるごは爽快な、 解放された気分でサイクリングを楽しんだのだ。 その後、名所にはまるで足を踏み入れなかったけど、それでもじゅうぶんアラン島気分だった。 かるごはアラン島の風、におい、ヘッジの中にいられた幸せで。 リナっちは、ただひたすらスムーズに自転車をこげる喜びで。 それに、本には「迷い猫」と書いたような、小さなアクシデントもあったしね。 なかなか考えさせられるよいひとときだったのだ。 そして――いったんB&Bに戻って、紅茶とチョコバーのおやつをいただく。 栄養補給。充実感をたしかめるための、ひとときでもあった。
2.サイクリングその2.........@"......@"......@"...@"....@"......@" つづくのよ!......@"...
でも、なんである。
かるごはまだ、くすぶるなにかをかかえていた。落ち着かないのだ。
外はまるで暗くならないし、動きのあるのは風だけという感じだけれど、部屋の中にいて
感じるだけでいいものか?
そう――まだ、まだ、見ていない!
有名なドゥン・エンガス(Dun Aengus)という廃墟を、ではない。
そう、それを見てこなかったというのはかなり不思議がられることではあるけど、
まあ今回は見送ることとした決定に不満はなかった。
で。
何を、というはっきりした目的があるわけではないけれど、外で。
もっともっと外の空気を、景色を、ながめて感じておきたかった。
かるごの中のなにか、もやもやしたものをこのままくすぶらせておいたら、妙な後悔を
してしまいそう。
そう思って、自転車を店に返すまでの2時間とちょっとの時間、ひとりででもいいから、
またサイクリングしようと思い立つ。
「ねえ。わたし、もうちょっとこのへん、走ってこようと思う」
リナさんは完璧にあきれていた。が、最後は付き合うと言ってくれる。なんでかな?
よくわからないけど、またまたふたりはゆくのである。
彼女はわたしに「タフだね」と言ったけど、わたしからしてみれば、リナっちこそ
タフである。なにしろ、年齢を考えると……いやいや、それには触れまい。
でもって、今度はずっと海岸沿いの道をゆくことにした。追い風。
右手に海、左手になだらかな丘。わたしたちがゆくのは、気持ちのよい果てしない道。
もしかしたら、二度と帰れなくなるのでは?と不安になるくらい、ゆるやかなリボンの
ような海岸沿いの道。
石を積んでいるおじさんがいたけど、もう観光客には出会わない。
今、このあたりで動いている人間は、わたしたちだけみたい。
「ね、どこまで行くのおーー?」
「もうちょっと」「あと少し」「次のカーブを過ぎたら」……何度も答えはしたものの、
ちっとも引き返さないかるごに、それでもリナっちはついてきてくれた。
ようやく引き返すことを決めたのは、現実的なリナっちが
「暗くなってきたら、ライトがない自転車だから危ない」
ともっともなひとことをくれたので。
「自転車を返すのにも間に合わなくなる」
方向転換。
む。
向かい風。
激しく一生懸命こぐことになる。
が、それでも――それでも、帰りゆるゆると自転車を進めながら、追いかけてくるような、
少し荒々しくなってきたような波の音を聞き、向かう風の冷たさを感じながら、うっすら
かかった月を見つけたときの安堵。
ああ、ここには夜がやってくる。
もちろん、どこにいても夜はやってくるのだし、朝もくるのだけど。
けれども、このあたりまえにこうまで感動できるなにがあったのだろう?
さっきまで石積みをしていたおじさんは、作業をやめてトラックでわたしたちを追い越して
いった。
日が暮れたから、帰ろう。家へ、帰ろう。夜が明けたらまた出かけるのだ。
それだけのこと、それだけの繰り返し。まるであの石垣のように。石畳のように。
一瞬の、ほんの断片だけど、そんな生活を見た気がした。
もっともっと厳しい現実が、あるだろうけれど。
わたしたちがたったの4時間しかしなかったサイクリングではなにも見ていないと言えるけれど、
でも、それでも、なんてことない「生き方」「生活」を垣間見た気がして。
よけいなものをいっぱいかかえこんでいる自分だから、そんな「あたりまえ」に感動して
しまったのだろうか。
いずれにしても、夜はふけていく。
夜は真っ暗闇になるこの島で、わたしたちはゆっくり一日をふりかえった。
たった半日、それでも十分にいろんなことを感じさせてくれた。
かるごが「あたりまえの人の営み」を感じたように、リナさんも同様に暮らしぶりの一端に
感じたことがあったらしい。本の中では「夕べのエスコート」というエピソードがあるが、
それも大いにアラン島の印象をよくしたに違いない。
風の音を聞きながら、ワインを傾けたときも、寝る前も、「来てよかった」と言ってくれた。
ほんとうによかったよ。ほっ。
「でも、次はもっとゆっくりまわろうね。あんなにしゃかりきに漕ぎ回らなくてもすむように」
あはは。そうだね。
あ。そうそう。安いにこしたことはないわな、と思って、翌朝のB&Bの朝はコンチネンタル。
が、これは正解であった。朝一番のフェリーはかなりゆれる。
ああ、よかったよかった、だってフルアイリッシュではおそらく……。
あ、あと。
エア・アランを利用するおトクな滞在プランもいくつかあったんだけど、今回はトライせず。
いやー。とにかく、次回もまたがんばってサイクリングしてまわるぞ!
何回でも行けるといいな!! 石ろまん、ちとハンパだったように思うもん。
そうよ、それでもってやはり……しつこく
「ウイスキーろまん」をのぞく
「かるごのアイルランドほんだな」をのぞく
「かるごのアイルランド」に戻る
BACK
TO HOME